はっきり言うと私の絵は萌え要素がないと自覚しています。うっかりすると「フランドル絵画」と評されてしまう程のリアル志向の絵に傾いてしまう訳ですが、自分では萌え萌えキュンキュンするような絵を描こうと思って試行錯誤していたりします。

でも譲れない部分もかなりあります。その中でも特にこだわるのは質感。「ぷにっ」とか「ぬるっ」とか「ぬちゃっ」とかの擬音が聞こえてきそうな、画面に手を突っ込んだら触れるような、その場の空気の温度や湿度、体温や臭いを感じられるような、そんなリアリティだけは崩したくないと考えています。というかそこが私のできる精一杯じゃないかと思いますので。

以前の乙牝の祈りでは暗闇の中で白熱灯がポツン、のようなレンブラント的陰鬱な世界を主に描いていましたが、今回は明るいエッチを目指して思いっきり肌の色を明るくして描いています。実を言うと私が描く肌の色は描く度に違います(右図「乙牝の祈り」より抜粋)。環境光(周囲の照明の色温度)などを念頭に置いて塗るのと、何度も上から塗り重ねたり色調補正をかけるため、同じ色を使うことがないのです。正直、自分でも時々ワケがわからなくなりますが。

著名な絵師の方が公開しているノウハウを見ると独自に肌色のカラーパレットを作っていることが多く、「ギャルゲ」の制作現場では複数のスタッフが彩色するので共用のカラーパレットを作るようです。しかし私のフォトショップはほとんど初期設定のまま。パレットどころかカスタムブラシも作らないし、タブレットすら筆圧検知などデフォルトで使っています。これはこだわりと言うより、作っても使うのを忘れるからですけれど。結局、毎回試行錯誤しながら色をこねくりだすため、次も同じように塗れないので効率が悪い気がします。

でもまあ、そこが良くも悪くも絵を安直に記号化せず、その場の空気や臨場感のようなものを出す秘訣なんじゃないかと自負しているわけですが…やはり萌えとは程遠いようです。