マイケルジャクソンが死に、ヒーローは居なくなったのだ。
いくら、ねずみの国でキャプテンEOをリバイバルしても彼は帰ってこない。
それでも、私たちはその時が来るまで歩き続けなければならない。

さて、インターネット商用化が始まって猫も杓子もホームページを作っていた時代がありました。
当時はブラウザと言うと今は無きNetscapeがメインでInternetExplorerがWindowsのインストールベース背景に急速にシェアを伸ばしていた頃でしたが、ホームページを作る側の大きな問題はブラウザの非互換性でした。
具体的にはPNGのサポートであったりタグ内の文字位置の解釈の差であったりJavaScriptのサポートであったりと、様々な非互換性があったものです。

その数ある非互換性の中でも最たるものは音声、動画などのメディア系タグのサポートでした。
貧弱な帯域しかない回線でメディア系のタグを使おうとすると高度な圧縮形式のサポートは不可欠でしたが、高品質かつ高圧縮な形式は大抵ライセンスの縛りがあり「どのブラウザでも使える形式」が無かったのです。

そんな中、FutureSplash AnimatorをMacromediaが買収してMacromedia Flash2.0をリリース。プラグインをインストールすればベクトルベースの軽量なアニメーションと画像圧縮が利用でき、しかもブラウザ間の非互換性を解消してくれると言う開発者としては画期的なものでした。

近年はメジャーブラウザの標準規格への対応が進み非互換性の大部分は解消されたのですが、それでもFlashはメディアのサポートが良くスクリプティング、ストリーミングビデオなどへのいち早い対応などWebにおけるメディア利用をリードしてきたと言う実績があります。

一方、次世代のWebを担うとされているHTML5のメディア対応はどの様になっているのでしょうか。
HTML5の動画サポートはVIDEOタグに統一される事となっていますが、そのVIDEOタグで再生可能なコーデックがブラウザで異なっていると言う事態になりつつあります。

そう、NetscapeとIEの非互換性問題が繰り返されようとしているのです。
しかも、その渦中にあるのはブラウザ間の非互換性を埋めてきたFlashを排除しようとする彼のアップルコンピュータが推進してきたH.264コーデックで、そのライセンス料が問題でFirefoxはサポートしないと言う事態になっているのです。

今、iPhoneにおけるFlashの取り扱いが問題になっていますが、アップルコンピュータはオープン性を問題にFlashをWebから締め出そうとするならH.264のライセンス問題を解決すべきです。

ここまで書いた時点で「OperaのプロダクトアナリストPhillip Grønvold」の「現在のインターネットコンテンツはFlashに依存している」「しかしながら、ウェブの未来はオープン標準にあると考えている。」と言う意見表明を読みましたが、オープン標準とWebに求められているユーザー体験のギャップは常に存在しそれを埋める方法を排除する事は果たしてユーザーの利益に繋がるのか?と言う疑問しか出ません。

またVIDEOタグの話に立ち返ると、いつの世も常に顕在化するライセンス問題の根本はOpenであろうが無かろうが「誰が開発費を支払うか」と言うことにあり、Flashについては「一義的にAdobeとAdobe製品を購入しているコンテンツ開発者が負担」していて、アップルコンピュータのように「プラットフォーム使用料として隠蔽され誰が支払っているかさっぱりわからない(実はiPhoneを通じてコンテンツを買っているあなたなのですが)」ような物ではないとだけは言えると思います。

この問題についてHTML5が本格的に普及する前により良い方向で解決することを望んでいます。